遠雷
うみこ

剥き身のコンセント・コードから
銅線が見えている
君のプラン・Aが
ショートしてる
あの
廊下あたり
焼けた
ゴムの匂いがする

声や恋が
焼けた場所
まだ残ってる
灰のような陰
あの
夏のあたり

覚えが
ないかい
蛇口が上むいてる
(誰かとキスしたの?)

空の高いところで
静電気が波打ってる
庇のかげから
蒸された香りが降りてくる

理科準備室で先生の白衣の端がゆれている
紫色の雷は
僕が上向きに曲げたストローの先に落ちている

祝福されない 濡れた体
孤独のあり方に
電気を通した君と
手をつなぐこと

ちっとも怖くなかった

曇りの日、
パレットの端に
洗い残した絵の具が、
薄くなって溜まっている
水と一緒に
一思いに溶けだした
淡い
色だった

筆で流す時、その指先があれていて
 ピンクだ
と僕は思った

それで、
僕の夢は全部紫色になった
その日、美術で使った絵の具も
みんな紫色になった

プールサイドで
雨が跳ねている
君は帰り道
傘を使わなかった

僕は全部洗い流した
そして顔を上げると
雲の隙間から
陽の光が射す一瞬が見えた
とても一人では抱えきれない退屈を感じた初めての日だった


自由詩 遠雷 Copyright うみこ 2016-03-01 23:41:10
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