奪われぬ春
唐草フウ


3月に入る前のふぶき
一晩が明けてブルーの大空に変った
卒業生が丸めた証書を持って談笑しながら通り過ぎる
きょうのひを刻みこむことを照れかくすようにして


たしかめ合うには
言葉も何もかも通り越してほつれて
交差して消えてまた点って
守りたくて
放れることを選んでしまう
皆さみしいのにそれしか選べない
だいじょうぶ、おなじだよと
忘れていく 単純に


思い出は生きているのかな
どこで生きているのかな
夢はどのくらい誰に生きているのかな
見えないものがいつまでも
聴こえるのは悲しみや震え
そしてよろこびにつたい涙する


多分今日の寒さも来年になれば忘れていく
わたしがどんな気持ちだったかも
そしてまた証書を持った卒業生たちを見て
同じような、すこしさみしい気持ちになれたらいい
それだけでいい











自由詩 奪われぬ春 Copyright 唐草フウ 2016-03-01 16:54:03
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