奪われぬ春
唐草フウ
3月に入る前のふぶき
一晩が明けてブルーの大空に変った
卒業生が丸めた証書を持って談笑しながら通り過ぎる
きょうのひを刻みこむことを照れかくすようにして
たしかめ合うには
言葉も何もかも通り越してほつれて
交差して消えてまた点って
守りたくて
放れることを選んでしまう
皆さみしいのにそれしか選べない
だいじょうぶ、おなじだよと
忘れていく 単純に
思い出は生きているのかな
どこで生きているのかな
夢はどのくらい誰に生きているのかな
見えないものがいつまでも
聴こえるのは悲しみや震え
そしてよろこびにつたい涙する
多分今日の寒さも来年になれば忘れていく
わたしがどんな気持ちだったかも
そしてまた証書を持った卒業生たちを見て
同じような、すこしさみしい気持ちになれたらいい
それだけでいい