白い増殖
あおい満月

いつからだろう、
胸になにかができたのは。
胸のなかの何かは、
柘榴のように真っ赤に青い。
柘榴のなかにはちいさな
部屋があって、
その部屋のなかには、
ちいさくなった私がいる。

がりがりがりがり、
白蟻たちは心室を食べている。
私の部屋は食いつぶされる。
白蟻は大きな蟷螂になって、
私の涙腺から、
長い爪を差し出す。

枯れ葉を口のなかに押し込んだ。
腐った臭いが鼻孔を蹴った。
かちかちかちかち、
何かが燃えている。
胸のなかで、
枯れ葉を燃やしている。
白蟻を殺すために。
白蟻たちは死なない。
どんどん殖えていく。
白蟻たちは増殖しながら、
私の毛穴という毛穴から、
這い出てくる。

よく見てみると、
町中のいたる生き物たちから、
白蟻が這い出てくる。

ほら、
その顔からも。


自由詩 白い増殖 Copyright あおい満月 2016-02-29 21:51:19
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