命の値段
イナエ


大根一本 一〇〇円
ステーキ肉一パック 二、〇〇〇円

畑から引っこ抜いたばかりだという
昨日まで大地に守られていた命
まだ十分に死んだとはいえない一つの命 一〇〇円
高いのか 安いのか

片やステーキ肉
細胞は死んではいないとしても
これら細胞が支えていた 一つの命は亡くなって
そこから取り出された一片の肉 二、〇〇〇円
たかだか ひとかけらが 

人間は売れないけれど
値段はあるのだ
一人の命が 
何億円になるのか
何百万円になるのか
保険会社は値を付ける

けれども
買い手がないから
自分で買うのだ
ローンで
しかし 
死んだ命に価値はないのか
ローンのお金を返してくれる

使い古し 
すり減った僕の命は
いったい幾らなんだろう 
保険会社は もう値を付けないけれど


自由詩 命の値段 Copyright イナエ 2016-02-26 18:55:17
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