ここに旗はない
ただのみきや

ここに旗はない
風に弄られ立ち竦むのは
他の何者でもない
東も西も南も北も
微笑んでなんかいない
ただ巡る風の音が
埋まらない空白を告げている


ここに旗はない
足跡は辿らない
途中で消え去るものだから
時間と風は休むことを知らない
見失うのは道しるべではなく
自ら求めてここに至った
ささやかな足場への確信


ここに旗はない
墓標なき白骨に敬意を払う
盃みたいに傾けては――
夢想の果て舌は潰え
無数のピリオドは砂漠となった
言葉は生き 人は死ぬ
幽霊は心に住む


ここに旗はない
誰の領地でもない
空白だけが迎えてくれる
無から無限へ目を瞑り半歩
――踏み外し落ちた等活地獄
言葉と心中の業を持つ
何度でも生き返りシは果てしなく



        《ここに旗はない:2015年12月20日》









自由詩 ここに旗はない Copyright ただのみきや 2016-02-13 19:06:27
notebook Home 戻る