闇に待機する詩人
坂之上放肆

暗い部屋で見えるものはただのパソコンの液晶です

そこに僕はカタカタ文字を置いていく
こそばゆい様な待ち時間をこうやって
僕はカタカタと文字を置いていく
恋人を待ち続けてすっかり暗くなってしまったけれども
このパソコンの液晶だけは明るく僕の目を焼くんだろうなと
焼かれた僕の目はただ置かれた文字を追っていく
窓の外からは部屋より明るい闇が部屋の洗濯物の輪郭を浮かす
生きているっていう実感なのかなこの闇がね
この闇のなかでいつしか僕も闇になるのかな
飽くまでも闇に溶けていって病んでいっても
ひたすら生きている僕に迷いはないのだろう
なるべく音を立てず
イヤホンでエド・シーランをききながら
文字をカタカタと置いていく作業に
たとえ闇に溶け
病み抜いて堕ちて
笑う技能を失いつも
恋人は帰って来てくれるよね
僕は君を待っているよ
液晶に文字を置いて並べて
こんなに闇が迫っていても
僕は君を待っているよ
どんなに遅くてもいいよ
僕のスマホを慣らす必要もないよ
僕はただ君を待つためだけに
この詩を液晶に並べているだけだから
君がいることより素敵な詩なんて
誰が書いた
誰が書ける
ねえ、教えてよ
そんな詩が存在するのかい
僕は君を待っているよ
お部屋は暗いけれど
僕の気配を消すために
お部屋は暗いけれど
僕は君を待っているよ
僕は影
君は陽
僕は闇
君は昼
君に会うために
君の帰りを待つために
僕は一生懸命待つよ
こんな詩を書きながら
僕は一生懸命待つよ
闇を光にかえておくれ
そのためにはいくらでも待つから
いくらでも詩を書くから


自由詩 闇に待機する詩人 Copyright 坂之上放肆 2016-02-12 18:38:51
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