処理し損ねたゴミに対する極めて意欲的な鑑賞法
坂之上放肆

僕は長らく病気を理由に生きるための義務を放棄してきた
本当にその義務を病気のために果たせない人はいるけれども
僕には少なくとも自分のそういった都合のいい理由を幸いにして
非情にも周囲の労働に喘ぐ人々を横目に遊び苦しんでいた
そうして痛々しくも生きていた
いつの頃から僕がそんなヴェヌスベルグのような甘美なる苦痛を
容赦なく舐め尽くす人畜となり果てたのか
僕はそれを赤面することなく堂々とインターネットのSNSなどで
半ば誇りを携えて嬉々として発言していたことを何とも思わなかった
そうして

僕に何人目かの恋人が出来て
その恋人のなにやら徒に僕と正直に接する態度に
そうしてその愛おしい容姿に
僕を希求する切実な行動に
僕は完全に堕ちて
全てを狂わし
さらに恋人を希求し返して
身動きとれなくなったところで
僕は恋人から逃げるが如く
他を遊び
それが幸せと思い違えていたことに気づいたところで
不可抗な偶然によって
恋人が非常に苦しんでいる
を目前に突きつけられた
前々から知ってはいたが
僕と似た病気
それがかなり深刻さを増していたことと
恋人は自らの労働をしていることにも
苦しんでいることが僕の怠惰を刺し貫いた
僕は苦しんでいる
から逃げるために遊んで紛らわす
を当然の権利のように楽しんでいた
ということを知らずして労働もし
苦しみを添えて
否、どちらがメインだか分からない
恋人はもっと苦しんでいる!

僕は苦しまなくても良い
ただこの病気故に怠惰に過ごしていた自らの不摂生を
非常な勢いでデリートすることを激しく強い意志を以て
活発に遂行しなければならない
それは
生きるための準備段階だとし
僕にとって
生きるための設備投資だとする
そうして
僕は非情さを捨てて生きるための義務を速やかに行う
可能でないならば探索する
探索して見つけ出して生きていく
僕は苦しみをその義務に伴ってはいけない
病気は治らない
だから苦しいと思うなよ
怖いのか
いいや
恋人と生きるのだろう
その恋人は最後の恋人なのだろう
こんな小さな矮小な僕と君と
巨大な病気に立ち向かう必要はない
ただその病気の副作用的に
生きるための義務がそっと寄り添えばいいのだとつぶやく


自由詩 処理し損ねたゴミに対する極めて意欲的な鑑賞法 Copyright 坂之上放肆 2016-02-12 17:56:53
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