〈サンライズジャーニー〉GLIM SPANKY - SUNRISE JOURNEYより
平瀬たかのり
お昼からの仕事はひとりきりの惣菜部
体はきついがおばちゃんおらずで気は楽なのだ
過去的現在的将来的に
考えなければならないことは
山ほどあるのだけれど
五時半までに終わらせないとならない仕事も
山ほどある
BGMは流行り歌の有線放送
ずっと恋は甘くて明日はいい日だ
自己啓発セミナーの講習を受けているのですねぼくは
「責任者出てこいっ!」
脳内に棲む人生幸朗師匠にボヤかせるのにも
そろそろ疲れてきたから
ぼくが時代にあわなくなったのサ、と
時代にピッタリ合った非正規雇用者のぼくが
うそぶくのも皮肉なもんだね、ははん
なんて嫌みな笑いを浮かべていたのだけれど
まさか出会った君たち
ドスの効いた歌声とブルージーなギター
過剰ならりるれろの巻き舌こそ
きっと世界への宣戦布告なのだろう
もしかしたらぼくがこれまで聴いてきたミュージックは
君たちに出会うために在ったのか
だからぼくはもう流行り歌に腹を立てない
何だったら口ずさんでやってもいいくらいだ
若い君たちの旅は今始まったばかりだ
日ごと大きくなる喝采と共に
その旅は続いていくのだろう
おんぼろバスはいつかキャディラックにかわるだろう
だけどぼくの旅はもう始まらない――
なんて誰が言った
いや、ぼく自身が言っていたのか
自転車通勤するぼくの右上方向には
晴れた日ならば朝陽が昇りつつあって
君たちに出会ってからそいつが
やけに眩しく見えてならないんだ
本当だぜ
あちっ、イカ天揚げてて油跳ねちゃった
※(GLIM SPANKY のファーストアルバム「SUNRISE JOURNEY」に収録されている曲をモチーフとし、いわゆる二次創作として、各曲と同タイトルの作品を自分なりにボチボチと書いていこうと思っております)