あおい満月

叫びたい花の襞が、
指先を突き破る。
突き破られた、
指の皮膚から噴き出した、
花の汁が、
タールのように暗い、
色とりどりの世界を描いていく。

傷つけあうことで、
構築された暖かな部屋で、
妖女はひとり、
大きくなる。
彼女の指に育まれている、
もうひとつの鏡の世界。
その上を泳ぐのが、
妖女と同じ名前を持つ、
私という母親。

母親が彼女を呼ぶ声が、
閉じられた世界に響いていく。

この左手の薬指と小指の間にある、
妖女だった日の記憶を、
はじめて知った日の朝は、
タールのように暗い、
眩しい朝だった。



自由詩Copyright あおい満月 2016-02-11 11:30:17
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