flicker
木立 悟






小さな歯車の音が降る
遠くへと去る足音も
積もりつづける夜の光も
淡い動きに満ちてゆく


光の器の心は欠けて
路面電車の灯を見つめ
ひとりの子が
ふたりの声で歌うのを聴く


雪の網が
見えない何かを捕らえ
あちこちで浅くふくらみ
静かに静かに揺れつづけている


手櫛の指の記憶から
心は原に迷い出て
光をほどいて歌い出す
結うように編むように歌い出す


雪を進むわずかな音が
影の踵に腿に積もり
雪をはじく一歩の宙宇の
火の尾 火の葉に散ってゆく


水が凍り 菓子になり
多角の夜を映しころがり
手のひらのなか またたきながら
冬の歯車を動かしてゆく

























自由詩 flicker Copyright 木立 悟 2016-02-11 09:47:57
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