flicker
木立 悟
小さな歯車の音が降る
遠くへと去る足音も
積もりつづける夜の光も
淡い動きに満ちてゆく
光の器の心は欠けて
路面電車の灯を見つめ
ひとりの子が
ふたりの声で歌うのを聴く
雪の網が
見えない何かを捕らえ
あちこちで浅くふくらみ
静かに静かに揺れつづけている
手櫛の指の記憶から
心は原に迷い出て
光をほどいて歌い出す
結うように編むように歌い出す
雪を進むわずかな音が
影の踵に腿に積もり
雪をはじく一歩の宙宇の
火の尾 火の葉に散ってゆく
水が凍り 菓子になり
多角の夜を映しころがり
手のひらのなか またたきながら
冬の歯車を動かしてゆく