あおい満月

誰にも見えない皮膚に、
がりり、刻印を刻む。
刻む音すらも、
拙いが深いカーブを描いて、
誰にも見えない私の皮膚を
構築していく。
まるで彫刻のように、
私の胸に、
痛々しくも艶やかな花が咲く。
花から溢れる赤い汁が、
私に刻まれた深い迷宮を潜り抜け、
その舌にいのちを与える。

あなたにはわかるだろうか。
あなたは、
目に見えるすべてのものの皮を剥ぐ。
剥いだものの隙間から、
真実を引き出そうとするから、
あなたに睨まれた私たちは動けない。
動けないまま、
大地の乱れた鼓動に、
翻弄されたバスのなかで、
遠い朝を待つ。

目を醒ますと、
一本の大樹のしたで、
横たわりながら眠っていた。
私の胸の刻印は、
気がつくと手の甲にまで
拡がっていた。
大樹の幹にも似たような
傷がある。
拡がる花の刻印。
大樹の幹に花が咲き乱れる。
赤い汁を滴らせながら、
大地から海へ、
やがて海から空へと。



自由詩Copyright あおい満月 2016-02-08 21:23:35
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