里に下りた顛末
くろねこ

百数十年ぶりに里に下りてきた私は
あろうことか人間に狩られてしまったのだ

この老体を食べても美味しくなかろうに
あろうことか吊るされてさばかれてしまったのだ

私の臓腑の中で可愛がっていた蟲までも
あろうことか曝露されて標本にされてしまったのだ

そして灰色の脳髄は
あろうことか珍味珍味と呼ばれて焼酎漬けにされてしまったのだ

酸素の薄れていき朦朧とする意識の中で
あろうことか今夜の献立を思い煩ってしまったのだ


自由詩 里に下りた顛末 Copyright くろねこ 2016-02-08 08:07:30
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