パッチワーク
あおい満月

あなたは、
私を時に追いかけながら、
しなやかに逃げていく。
あなたを追いながら、
私の目にうつりこむ景色は、
万華鏡のように美しく、
手ぶれた写真のように、
水面の揺れのように艶めいている。

あなたは時々、
私に赤い林檎を見せる。
私は言われるがままに、
白い歯を立てる。
すると林檎は消え失せ、
空き缶が残る。
私は空き缶を噛んでいた。
朝だった。寒い冬の朝に。
鴉になったあなたの笑い声が谺する。

それでも私はあなたを愛する。
綿菓子のように儚いあなたの、
すりぬける心を。
あなたに私の熱を伝える。
伝え続ける。
あなたは目を開けたまま動かないが。

時折、あなたの無邪気さに
波風が立つのだ。
あなたは私の欲しいものを、
掬いとるように掠めていくから。
それでもあなたを愛している。
この心が憎い。
裏返った感情は、
でたらめな空を飛ぶ。

夕陽が左に傾いて、
でたらめな空が暮れていく。
愛したり憎んだり、
笑い合ったり涙したり、
まるでパッチワークだね。

それでも、
すり抜けていく、
あなたを愛してしまう。
私が赦される日は、
きっとないだろう。
けれど私は放ち続ける。
星一つない夜空にさえも、
叶うことのないこの愛を。


自由詩 パッチワーク Copyright あおい満月 2016-02-07 21:03:44
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