前夜
ヒヤシンス


 夜明け前の契りに心がざわついている。
 それぞれに瞳を持つ全身の細胞が私の眠りを妨げる。
 これはいけない。
 開いた目の奥で過去の夢を見てしまう。

 見慣れた天井の染みが蜘蛛の巣に見えて私を捉えようとする。
 まだ私は許されてはいないのだろう。
 耳の奥でベートーヴェンの弦楽四重奏が鳴りっぱなしだ。
 指揮棒を持たない私に彼らの演奏は冷たい。

 希望とはなんと美しく儚い言葉だろう。
 熱した頭で私は希望を渇望する。
 過去という土台の上で思い切り指揮棒が振れたなら。

 闇はまだ深く私の頭は重い。
 夜明け前、希望の門は開いたり閉じたりしている。
 私は一人、機が熟すのをじっと待つ。


自由詩 前夜 Copyright ヒヤシンス 2016-02-06 05:51:13
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