冬の家
あおい満月

私が帰る家は、
ここではなくて冬にある。
冬の明け方近くに外に出ると、
街全体が私の家になる、
家には誰も乗っていない
ブランコがあり、
北風に吹かれて揺れている。
私は自販機で温かいコーヒーを買い、
ブランコに腰をかける。

東の空が赤く染まる。
私は冬の朝焼けが一番好きだ。
私は冬という私の家中を歩き回る。
あくびをする猫や鴉の鳴き声が
心地よい。
風の冷たさに立てた襟の首に光る石が、
今日生まれる一日の道標を照らしている。

私は私の冬の家を力強く抱きしめる。
そうして五感すべてで、
冬に谺する春の胎動を聴く。

春は冬のなかで、
風の旋律とともに、
静かに深く育っていく。
やがて夜に花を咲かせるまで。



自由詩 冬の家 Copyright あおい満月 2016-02-06 03:10:06
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