贖罪の山羊
餅月兎



―「また、もし人がみだりにくちびるで誓い、悪をなそう、または善をなそうと言うならばその人が誓ってみだりに言ったことは、それがどんなことであれそれに気づかなくても彼がこれを知るようになった時は、これらの一つについてとがを得る。」(レビ記5:4)




白い静寂が幾重にも層をなして
人々の過ちを覆い隠す季節

ひとやにいましめられた咎人に
犇めくひとのあいだ
正義の代弁者が石を投げつける
糞にたかる蠅の群れのように

しるべなき虚ろな闇に
ひとの罪が溶けて流れる時刻

磔の骸を
犇めくひとのあいだ
人倫の守護者たちが苛む
屍肉を食い破る蛆の塊のように

私は蠅
私は蛆虫
犇めくひとのあいだ
同胞の血で今日を生きながらえた
愚かさという呪いが
とこしえに私をいましめている


自由詩 贖罪の山羊 Copyright 餅月兎 2016-02-05 21:29:36
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