なにもかも
平井容子
・NEWDAYS
飛び降り
宙ぶらりんで嗅いだ春は
甘かったかな
苦かったな
コーヒーと海を混同したまま
電車はくさる肌の上を黙走していく
・ドーナツ
暴力と真水のあわいにある光
なつかしいと言えば全て許されると思った
人差し指と親指で作ったトンネル
手探りで過ぎるころ
からだの内側はもそもそと千切れている
・ベローチェ
ほしがるものを知るために
それ以外をすべて飲みほした、そうだね?
向かい合って座る
きみは一億光年先で燃え続ける
席を立つ
雨なのか汗なのか涙なのか海なのか
なにもかもひとつになって