ぬくもり
ただのみきや

公園の雪やまを
手作りのコメ袋そりですべる
子どもたち 
一年生か 幼稚園か
寒いも楽しい
声がひびく
日差しにきらめいて
晴れ間の青にとけてゆく


眺める距離は時間
心は容易に踏み越える
通いなれた路のように
記憶に段差はなく


干からびかけた
真っ二つの
転がっているこいつを
布でくるんで
きつく しぼる
まだ それでも まだ
終わっていない
滴るものがあって


時折 幼子を連れて
一緒に遊ぶことを想う
手を繋いだり肩車して
散歩したり
そりすべりしたり
膝に乗せて
絵本を読んだり――


想うことは楽しい
楽しいことが悲しいのか
悲しいことが楽しいのか


二月 晴れても寒い
耳や頬が奪われて
虚空と曖昧になってくる
正気でしかいられない
燃え尽きかけた石炭が
ひとつ 転がっている


あの体温
弾ける笑い声の音楽
じっとしていられない
あの沸き上る
驚くほどの
腕の中から飛び出して――


そうして 
あっという間
すーすー 
甘い寝息



            《ぬくもり:2016年2月3日》








自由詩 ぬくもり Copyright ただのみきや 2016-02-03 18:01:22
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