白い月
いねむり猫
早朝の青空に
ふらり 浮かぶ
白い満月
しんと 静まり返った
人々の意識の空白を突いて
薄白い筋雲たちが
丸く集まった 作りかけのまゆ玉
風に 解けてしまいそうな
はかない現れ
あれは 月の幽霊
この世から 切り離された 遠い距離を
ふと見せてしまった 冥界の入り口
冬枯れた 小手毬の枝に張られた 蜘蛛の糸
そこに囚われて揺れている 小さな枯葉
にじむように現れて 気づかないまま消えていく
そう もうすぐ消えますから
そっとしておいてください
青い空の 白い月は そうつぶやいて
一つ 身震いした