冬の旅人
ダーザイン

その道は
街灯の小さな明るみの中に
白く浮かび上がっていた

様々な思いが通り過ぎていった
その白い舞台の上を
今日は
消え残る足跡がひとつ
闇の中に後ずさる

風が
粉雪と共に運び去る
藁色の影たち

公園にこだました
子供たちの笑い声
明色のセーターと
毛玉にまといつく雪つぶて
遊戯の輪の中で
つながれたであろう手のぬくもり

とある凍れ夜
うさぎは死んだのです
祈るようにさしのべられた
少年のてのひらの中で
かたく目をつむり
ちいさくふるえて

 その日私は・・
 母親は胸の内で呟きます
 勤めを終え くたびれた心で
 今日もしんしん降りつむ雪を
 車の上から払い落とし
 ほっと一息つくと
 フロントガラスの内側に
 深い海の底のように広がる静寂

 放心と痛みを結露させる曇りガラス

そのようにして
消えていった風景

約束の花束は
宙空で凍てつき
微塵となって消えていった

吹き過ぎて行く雪片 そしてまた雪片

空の割れ間から
神さまたちは退場し
さえざえと
冷たい光が語り始める

いまだ かつて すでに
あらかじめと
空しい言葉を

それでもやはり
暗い夜道をしばし歩き
一瞬振り返ると
あの明るみが
立ちづさんでいるのです
孤独な姿で
闇の中に

一歩 歩みでて
明るみの中から歩みでて
少年の肩を照らす星の光

140億光年の星座の下
厳冬の季節をめぐる
冬の旅人


自由詩 冬の旅人 Copyright ダーザイン 2005-02-21 16:40:23縦
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