抱かれて抱いて
ただのみきや

吐く息で散り 
舞う 雪の朝に
傷口のファスナーは下ろしたまま
眼差す問いが鷲づかみにした
瞑る心臓 跳ねる魚
口いっぱいに頬張って
ダシテ マタ クリカエシテ
僕は確実にろうそくより青く
照らしながら消失するだろう
狂い死の芽吹き
足裏から沸々と押し寄せる
春の耳ざとい太鼓
 〽とんつくてんつく
   つくてんどんてん
がらがらと乳母車が走り去る
体内の海が揺らめいて
客観視できない場所へ
顔を埋めた 不安の突起
生殖を媒介する虫と草花の匂い
歯を立てないで
やわらかい季節の結び目に
いまはまだしろくふりつむ
鎮痛剤に良く似た沈黙
隠匿されたまま悶え
傷口に踊る陽炎
あなたの耳を咬む言葉の体温



        《抱かれて抱いて:2016年1月30日》






自由詩 抱かれて抱いて Copyright ただのみきや 2016-01-30 21:23:33
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