満月
枝
帰り道
どこもかしこも冬の空気で
しんとした夜のそらに
ぽっかり月が浮かんでいた
北風の冷気が全身を刺す
爪先はもう完全に冷え切っている
死んでしまったのではないか
と思うくらいに。
どこもかしこも真っ暗で
建物から漏れるか弱い光と
街灯だけが頼りの世界に
ありありと浮かぶ満月
一面嫌なグレーの雲に覆われていて
星の光さえ届かないのに
満月の光はここまで届くのだから
不思議。
それにも関わらず
貴方の輝きが控えめで冷たいのは
もしかして
太陽に配慮しての事だろうか?
幽玄で怪しいその光に
何故だか心が振るい動かされる
まるで狼男のように
余りに月が美しいので
自分の死んだ手の冷たさを忘れていた