肉脈の惑星
ただのみきや

希望を乗せて放り上げられた球は
回転しながら
高く 上がり
ゆっ くりと
静・止 
  落・下  す    る


引力に負けてあえなく
抱かれてしまう
理想・思想・夢想
小さな地球は
大きな地球に
力の限り衝突する が
はなから一つとでも言いたげに
ささやかに周囲を揺らすだけ
天変地異は起こらず
嵐のような革命もない


父の太い猟師の腕が
母の無数の乳房の滴りが
窒息させる
取り込まれ
吸収される
一体の彫刻のように
切れ目のない
見開かれたオニキス
大理石の頬
シヌアルの霊の陰影が添えられる


あまりにも無垢で無鉄砲
甘く酸っぱいリンゴが落ちる
すでに虫食いだった
違うと言う
知らないから違うと
樹が悪いと言う
だが樹はおまえの種にすでに書き込んだ
《ひとつの肉の連なり 同一の本質》


ひとつの灯のようにおまえの顔
ゆがみ 煙る やがて――


おびただしい死体と死霊と見分けのつかない
ぬるい人海の培養液で捻じれながら果てしなく
分裂して
考えない
美しい脳の結実を
祝う 
軽快な祝砲と万国旗
小さくなったニムロデがへその緒を引きずって


リンゴよりリンゴを喰らう虫が大きくなった
地球よ
いつまでも飢えて鈍いまま
わが子を喰らう子宮を崇めて




             《肉脈の惑星:2016年1月27日》









自由詩 肉脈の惑星 Copyright ただのみきや 2016-01-27 21:18:39
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