雪が降る、一月に言葉は
石瀬琳々

きみは、ぼくの、愛の痛み
そして誰も知らない言葉だった


忘れたことのない言葉だった でももう遠い
舌の上に転がしても 口にすることさえ遙かで


雪が降る、雪が降る、ぼくのさびしい昼に
一月の太陽は輝き こうしてあたらしい夢に
熱情はまだ続いている 雪が降る、まるで
炎に似たセツナサデ 静かにそっと燃えている


振り返ってもいい 誰もいない冷たい道に
陶器の手触りだけが指先に残っている
触れたこともないのに この指に残るあざやかな
あれは、痛みだったろうか
ふいに割ったら指に突き刺さり 血が音もなくしたたるだけの


雪は降る、雪は降る、それとも忘れるというやさしさで


ぼくの、愛の痛み、きみは
言葉はもう思い出してはいけない 残された傷のまま


きみのなまえを ずっと願っていたかった
こぼれるのはただ雪、雪が降る、声もなくして







自由詩 雪が降る、一月に言葉は Copyright 石瀬琳々 2016-01-27 12:54:26
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
十二か月の詩集