じょーじのーすげーと
もり

「ご自由にどうぞ」
テイクフリー、とまで記して
おれは過去最高傑作の一編を
吉祥寺の北口のバス乗り場の
あたりに置いたんだが
テイクフリー、ってカタカナで
書いちゃだめじゃん
バカだなー
っていう感じの自嘲気味な
せきをした
花金だし、大変な騒ぎになるなァ
と踏んでいたんだが
終電過ぎても 誰も取りにきやしない
わざわざマルエツで段ボールまで
もらってきて置いたのに ちくしょう
でも丑三つ時に ひとりの若い女が
手にとって眺めてたもんで
おれは「ぜひ清きぜひ清き・・」
と擦りよってみたかったが
せきをするくらいしか能がなかった
町会議員を二期つとめた
ひいじいちゃんが天国でため息をついた
テレパシー、そうかテレパシー
おれは自らの詩に なけ!
とテレパシーを送った
なけ!なけよ!仔猫のように!
記者会見中の芸能人みたく!ほら!
なのにおれの詩は変わらずまのぬけた
表情でヨダレを垂らすばかり
ばか・・ 女は行ってしまった
場所がわるかったか、と
別日に出直そうと思った
午前五時
客に飲まされたキャバクラのボーイが
千鳥足でおれの詩を手に取った
そして、
鼻を
かんだ
だと・・
呆然とするおれ自身とは対照的に
詩はまさかの行動をとった
噛んだのだ
ボーイの下唇の端のあたりを
グワアァァ!
ボーイは叫びながら交番へ駆け込む
詩は風に吹かれて
路上へと投げ出される
ひらひらひら
どさっ
おれは 免許証の写真だけは見せたくない
見せたくない見せたくない

呪文のようにくり返していた。




自由詩 じょーじのーすげーと Copyright もり 2016-01-26 23:33:27
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