「目をつむると」 ー歳を取るとはこういうことか(9)ー
イナエ
目をつむると見えるものがあった
遠くの山頂に輝く光
道は途中で草むらに隠れ
どこまで続いているか見えないけれど
どこかに沢が有り
林間に小道が有り
小動物の通る道など
きっと到達するルートはある
無ければ
己の力で切り開くだけだ
そう意を決して上ってきた
今 目をつむっても見える物は
歩いてきた道
山腹の沢や沼
麓の都会の喧噪
光に照らし出されたステージ
丸い光の中に立っているわたし
今 目をつむって見える山には
岩壁の前に立つ孫たち
なんと危なっかしいことだろう
ここから見れば
先人たちの開き 舗装した林道が
白いたすきのように山頂へ続いているのに
ああ 目をつむって見上げるものは
暗い岸壁をよじ登る孫たち