詩の存在意義
鷲田

詩とは言葉によって世界を再構築する行為・作品である。では、なぜ、そのような行為・作品を詩人は描き、世の中は求めるのであろう。その前提として、現実世界は例えそれが幾ら素晴らしかろうと、苦悩があり、苦痛があり、困難があることが挙げられる。それを現実的な手段として解決していくものは政治であり経営などであるが、病気を抱えている人がいれば、老いて苦労している人もおり、人間関係の悩みなども完全には解決することは出来ない。現実的な課題に対して現実的な解決方法や対応をしても、また現実的な課題が世の中には溢れるのである。その為、そういった困難が積み重ねられた時、違った方法論として、人は新たな、又、現世とは違った世界に逃れようとする。

その時、言葉によって構成された詩の存在意義が出てくる。例えば会社で嫌なことがあった時、家庭が上手くいかなかったとき、人間関係で苦労した時、金銭上の悩みがあった時など、それらの困難は詩的世界感に染まることで忘れ去ることが出来る。新たな世界観は現世の世界観を忘却させ、癒すのである。

人の人生は楽なものではない。それはどれだけ社会が成熟していようと、経済的に恵まれていようと、何かしらの矛盾や否定感を背負って人は生きているのである。そのため、ありきたりの表現の詩であっては現実の世界から逃れられず、それでは、現実の世界を生きることの困難から逃れられることは出来ない。そこには、言葉による飛躍的な表現が詩には必要であり、言い換えれば、新たな世界への入り口となる言葉が必要なのである。その世界観を描くことにこそ人生や社会における詩の存在意義があるのではないのだろうか。


散文(批評随筆小説等) 詩の存在意義 Copyright 鷲田 2016-01-22 19:11:39
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