ねがいごと
あおい満月

ぬるいまどろみのなかでみた
せつなの夢の裾の感触が、
この指に絡みついてはなれない。
けれど、
ひとつの、
拭いきれない痛みがある。
痛みはこの胸を貫こうとするが、
せりあがる熱に溶かされて消えていく。

私の手に握られているのは、
銀の匙なのか、
刀なのかわからない。
けれど、
私の右手は血でぐっしょりと濡れている。
痛みはない。
何故こんなものを握ったのか。
理由はわからない。
けれど、
ある決意を確かめたかった。

ゆっくりと、
なまぬるい川の水面へ、
私の両手は、
稚魚たちを放流する。
私は私が添えた決意を、
稚魚たちに託す。
まるで、
ねがいごとを書いた便箋の切れ端の
入った瓶を海に流すように。
私のねがいごとは、
届くことのない、
その右手だ。
叶うことのない、
その熱だ。


自由詩 ねがいごと Copyright あおい満月 2016-01-20 22:25:01
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