海の声
あおい満月

手のひらの奥から、
沸き立つ海の声は、
私の睫毛を掠めながら、
空に向かい飛んでいく。

私は罪という罪を、
毎日犯している。
誰もが罪と認めないことでも、
私のなかでは明らかに罪なのだ。
たとえば、
満員電車のなかで障害者や、
妊婦さんを無視して座りながら
眠り込む大人の首を締めて、
刃物をつきつけてみたり、
私の頭のなかは、
一種のサバイバルだ。
私でさえも、
名前も知らない誰かに、
狙われているかもしれないのに。

書くこと事態が罪なのか。
私はその境界線にいつも悩まされる。
自分の持つあらゆる悪を浄化するのに、
心が放った矢は、
時としてありえない方向へむかう。
けれど私は、
迷うことなくあなたのドアを叩く。

分離した自己を、
必死で一つにまとめてあなたに差し出す。
私は私を空にして、
あなたをこのなかに取り込む。
苦い薬は、
あとで必ず実を結ぶと信じている。
私は私に降りかかる雨を光に変えていく
必ず変える。
この希望が、
生きていく証だから。
愛を、
その手が教えてくれたから。


自由詩 海の声 Copyright あおい満月 2016-01-17 22:18:58
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