wrattthhhh
竜門勇気

二人で生きてるだけで
罪になるネズミの兄妹
腐った痰壺に顔を突っ込むのが日課

シンナーの染みこんだリノリウムの床のみぞ
鼻先でなぞると世界が反転する
それが彼らの慰めです

体の半分に広がった青いペンキは
深刻な痒みと恐ろしい敵を呼び寄せる
腐った痰壺は遠くなる
ひどい恐怖が喜びよりも多く懐にある

なにがせかいのすべてなの?
わたしはしあわせについて
なにかひとつかんがえることもいやになりました

これがせかいのすべてなので
ぼくはしあわせのひとつを
おまえがなにかひとつかんがえることだとおもうようになったよ

二人で生きているネズミの兄妹は
何度かそんなことを話し合っている姿を
見せてくれていたのだけど
年の明けたころからは
ついに一人になってしまって
僕に話しかけるようになりました

あなたはわたしがなにかひとつかんがえるたびに
なにをおもいますか?

ぼくはあなたがひとつもおもわないなにかを
せかいのひとつだとおもうようになったよ



自由詩 wrattthhhh Copyright 竜門勇気 2016-01-15 02:31:34
notebook Home