カンヴァス
あおい満月

冷えた夜に冴えた月を眺めながら、
あなたを思い浮かべる。
私は窓の鏡のなかで、
薄皮を剥いでいく。

あなたの鼓動が私の身体に触れる。
私は刹那に哀しくなる。
歓喜に触れて哀しくなる。
私など、
あなたのカンヴァスに
描かれて良いのかと。

あなたは月のような目をして
注意深く私を描く。
細く白く長い指先で。
あなたの指先が、
私の内部を貫いていく。
私しか知らない筈の部屋の鍵を抉じ開けて。
けれど、
私は怖くはない。
あなたに寄り添う私の体温は、
すべてを知っているから。
私たちの前には道はない。
けれど軌跡は必ず残しているから。
あなたと刻む時間の一瞬一瞬に、
愛を込めて。



自由詩 カンヴァス Copyright あおい満月 2016-01-14 22:55:17
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