断章遊戯
ただのみきや
断章として出会う
わたしたちは
繋ぎ合わされた
死に往く者の断片として
齟齬と違和で腫れ上がりながら
ひとすじの清流であろうとした
二人の詩人
発火した
二つのカンバス
瞳に跳ねる悪戯な木漏れ日に
立ち眩む舞台の即興劇
わたしたちは似ても似つかぬ筆で
互いに蒼く陰りを添えた
大人ぶった子どものお絵かき遊び
二つの時を刻む時計
昼と夜のように背中合わせ
目指す頂きを異にしながら
ひとつのザイルで結ばれようとした
同じ時間に生きて
同じ時間を生きることもなく
二つの歌声
どこか 響き合い
気を揉ませながら
((⦅⦅不協和音⦆⦆))
((⦅⦅うるう⦆⦆))
長 く 尾を
――――引 い て
((⦅⦅うるう⦆⦆))
弦の
狂 い イ
湖の夕日みたいに磨き上げた
二体のホロウボディ
錆びた苦い血の釘で
表象として刻まれる
追って追われる無限階段
どんなに転調を繰り返しても
殺し合う二つの旋律は
番いたいのか
喰らいたいのか
二匹の蛇が縺れるよう
さざなみ立つ生皮の奥深く
針にかかった腸が激しく反り返る
真の空白の夢中遊泳だった
わたしたちは
愛に似すぎた遊戯で
屍衣を着せ合い
くり返し愛撫した
今は立ち枯れた
白髪のあざみ
剣を向け合ったまま
幻燈の月に照らされて
紙一枚の厚みにすら
互いの魔力は消えていた
夜に白く上書きする
吹雪は人語を拒んだ
暖炉の傍ら あなたは
吸い込まれるよう
最後の断章を火にくべる
「 」
闇に踏み迷うわたしは
手の中の言葉に息を吹きかけながら
――朝には冷たくなっている
《断章遊戯:2016年1月13日》