さよならの跡/殺風景な部屋
凍月






君の指先の温度を
以前触れて測ったのに忘れてしまった

まだ火のついた吸い殻 逆再生される夢

千円札は五百円玉二枚にはならないし
五百円玉二枚は千円札にはなれない

モルタルが壁から離れそうだ
アスベストが綺麗な天井
剥き出しの配管に風情を感じる

音の鳴らないオルガン
埃を被っている静かな鍵盤

床に さよならが擦れた跡

枯れ落ちた姿を見る為に放ったらかしにされた観葉植物


君の指先の体温
この殺風景な部屋と同じくらいだったんじゃないか

今では思う







自由詩 さよならの跡/殺風景な部屋 Copyright 凍月 2016-01-13 21:09:20
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