感謝
葉leaf




晴れた空が広がっているのは
誰かが空に感謝を投げたから
海がいつまでも青いのは
誰かが海に感謝を流したから
「ありがとう」は持続する響き
どこまで遠くへ行っても決して衰えない
どんどん増幅する「ありがとう」は風を引き連れて
世界をくまなく巡行する

壊れてしまった宝物
綻びた晴れ着
止まらなかった涙
何もかも優秀な燃料へと凝縮して
感謝の火薬を練り込み
夜に花火を打ち上げよう
赦せないものを赦し憎しみを消し
嫌悪を浄化するための
「ありがとう」は純粋な光
人の複雑な闇を単純に消し去る白すぎる光

松の木は自分を流れる時間に
感謝の樹液を這わせた
彫像は自分をかたどる空間に
感謝の体積をかざした
鉄塔は自分を支える構造に
感謝の電波を添わせた
万物はみな存在から一歩踏み出すとともに
より存在へ潜るように感謝を捧げる

一日が終わるとき
青春が終わるとき
季節が終わるとき
世界が終わるとき
ひときわ放たれる情念は感謝の情念
何かが終わるとき
それは終わるのではなく感謝として始まるのだ
何かが消えるとき
その痕跡には感謝の息吹が記されている
その遍在する感謝を
今朝たった一人の僕が独占した
僕もまた一滴の光として


自由詩 感謝 Copyright 葉leaf 2016-01-13 06:36:56
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