スノーホワイトシンデレラ
たちばな まこと

姫様
こんな朝には目をつむり
芯部の痛みをやわらげるのです
色無き人々の圧迫などには
目も向けず
想うのです
ぼくを

スノーホワイト
赤い果実はあなたの芯部で
いかなる毒をしみ出すのですか
のどで毒が眠れる内に
くちづけをさせてくださいませんか
けれど姫様
ぼくはあなたが目を覚ましても
くちづけを届けます
ぼくも
そのときばかりは魔物になって
あなたの頬に桃花がにじんでも
くちづけを降らせます
くちづけは右の首筋に
腕のつけ根の弱いところへ
デコルテをおろして左の胸へ
あなたのつぼみから全ての毒がこぼれても
永遠だと言われても

姫様
ぼくは早朝のニュースを逃しません
あなたの城にはもう雪が
降りてくる頃でしょう
ぼくのからだは暖炉の前で
凍った脈さえ溶かしてゆきます
おびえるままに歩めもせずに
背骨にのぼった霜柱
あなたの氷はぼくが溶かして
あたたかな泉へ注ぎます
そして姫様
素肌を見せて
ぼくに抱かれて踊りませんか
あなたの痛みは泉の中へ
漏らしてしまえばよいのです
あなたとぼくはとき色の泉で
わかい命をあやす手で
ぬくくてやわいふれあいを
つないだままでゆくのです

姫様
零時を過ぎても
あなたの熱でぼくはいつでも
…満たされる




*2004年


自由詩 スノーホワイトシンデレラ Copyright たちばな まこと 2016-01-10 18:10:20
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