鯉の様に
陽向∮

…屋根から滴り落ちる水滴を見つめて

少しだけ ほんの少しだけ
水の音に耳を澄ませたい
鯉の泳いでいる 石に囲まれた
あの光景を思い出すから

かつての敗者だった僕に
送り届ける安らぎ
冷たい水を飲み目を閉じる
ストーブの前で震えていたことを
思い出しながら

もう行方も分からなくなって
しまったね けれど
すでにあの日拾った石はもうない
そのくらい時間が経ってしまったんだ
いくら胸に刻まれていても

かつての君を通して僕の
胸の奥に映るこの古いお屋敷は
鯉の泳いでいるあの時の光景の様に
君の見た頃と変わらない生活感があるんだ


自由詩 鯉の様に Copyright 陽向∮ 2016-01-10 15:03:05
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