光の歩行者
木立 悟
右手に枯花
左手に造花
冬の雨と骨
水の径のひとつの影
陽の無い朝
海を照らす目
壁に描かれた
絵に消える羽
遅い午後
遠いはばたき
原に散らばる
光の音
夜の庭が赤く浮かび
少しずつ少しずつ薄くなり
雪にひらく手のひらになり
受け止め切れぬものをこぼしている
骨のなかから角を拾い
枯花を捨て 造花を捨て
枝と肉を繰り返す指は
やがてかがやきの爪を生やしてゆく
水の径から風は消え
小さなうたの痛みは増し
はばたくものらはすぎてゆく
みな寝静まる真昼の街を
再び響くはじまりの夜に
霧は霧にたちこめて
帰る場所のないものたちの
花と鉄の指を濡らす