ストロベリークリスマス
りゅうのあくび

クリスマスイブの前夜に
ようやく恋人が
同じ携帯電話に
一緒に乗り換えることを
わかってくれる
港町に降りしきる
小雨に濡れて

まるで外国から
貿易船で運ばれた
苺のフランボワーズから
漂う薫りを
捜し求めるみたいに
恋人たちはキャリアと呼ばれる
通信会社の代理店のあいだを
相見積りをして歩く
永い十字路を
横切りながら

冬至が過ぎたばかりで
日が短い夕方は
すでに暮れている
店では人間の言葉を
話すはずのロボットが
立っていたけれども
もはやあまり動きはしない

他の客は依頼をもう終えて
ふたりだけが残っていて
契約を取り交わしている最中に
一人残業をしている
従業員はまるで神父のように
感謝と祈りを捧げてくれる

帰り道に就くときには
クリスマスイブの
スイーツを創る
パティシエたちが声掛けをしている
硝子越しのふっくらしたケーキには
数多くのストロベリーが
瑞々しく鮮やかで
恋をするルージュのように
夜空に紅く耀いていた


自由詩 ストロベリークリスマス Copyright りゅうのあくび 2016-01-03 19:30:49
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