島
いねむり猫
かすかな音に導かれて
薄暗い防砂林をかき分け
青い海が 突然開ける
予想もしない光 自分の胸が裂けて 世界が開かれる
幾層もの複雑な青 視界が波に飲み込まれる
潮風が 私の口から押し入ってくる
いつの間にか 風と波の音で 頭が満たされている
ただ よたよたと海に近づいて 島の草の一本のように 立ちすくむ
神の島だと
連絡船に乗り合わせた島人が ふっと言った
石ころ一つ、持ち帰ってはならない
素潜りの漁師が 遠浅の沖で 漁から戻って来る
もう まもなく 日暮れだ
すべてから置き去りにされていた孤独から ふと返される
体が冷えている
時が 白砂と 島を見下ろす空の間に 吸い込まれた
海岸沿いに歩き出すと、 関節がぎしぎしと呻く
ウラシマだ とかすれた声を出してみる