あおい満月

ちくちくちくちく、
縫い針が私の影を追いかける。
縫う主はにこにこにこにこ、
暑すぎる笑みを浮かべながら。
オネエチャンハココノヒトデスカ
(ワタシハオネエチャンガタベタイ)
ヨカッタラオハナシシマショウヨ
(ワタシハオネエチャンヲシャブリタイ)
ミカンハスキデシスカ
(ワタシハオネエチャンヲカミクダイテ)
アマクテオイシイデスヨ
(ソノ血ヲナメタイ)

休日の団地街は、
そんな年寄りたちの
淀んだ性欲が滲んでいる。
だから若い子どもを持つ若い親たちは、
子どもをやたらに外に出さない。
外には保証などないからだ。
どんな骨が子どもの髪を喰いちぎるのかわからないから。
大人の私でさえ、
年明けのシャッター通りの商店街は怖い。

シャッターの影に隠れている獣がいる。
獣は狙っている。
へらへら浮かれる若者たちを。
シャッターのなかの獣たちは、
刃を研ぎ澄ませている。

私はそれに気づかずにやりと
三日月を出した。
その刹那、
獣がぎらりと光る刃を私に振りかざす。
刃は月の光りに似ている。
私は自身の身もかえりみずに
恍惚する。

ちくちくちくちく、
今日もベンチに座りながら、
骨たちが囁いている。
(アノコハオイシソウネ)



自由詩Copyright あおい満月 2016-01-02 20:33:18
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