なみだ
あおい満月
私はことばを貪りながら
あなたをワルモノにかえる。
ワルモノ、わるもの、悪いもの、
割れるもの、
あなたは林檎のような赤ん坊だ。
いや、赤ん坊のような林檎だ。
私はがりがり林檎をかじる。
あなたはどんどん、
痩せながら肥っていく。
私のなかであなたは膨れ上がり、
おしっこになって外界に放り投げられる。
ぷんぷんと甘い蜜を滴らせた私の血が、
私を骨と皮だけにする。
私が食べた、
あなたの皮膚も骨も透けはじめて、
私たちは衰弱した。
ただ、鍋で炊いたばかりの米を食べながら、
私たちは私たちのままで、
ただいたかった。
だから、
けして抜いてはならない
最後の切り札を抜いてしまった。
ぬくもりを残し、
あなたは私の毛孔から抜けた。
記憶がからん、と転がった。
私はその記憶を幾度となく繰り返し
孔を開けた。
わすかな孔から見えたものは
なみだがつくった星空に似た記憶だった。