リアリズム
鷲田
わたしはわたしの世界を見る
薄ぼんやりとした世界の表情を
いくつもの闇の交わり
いくつもの光の温もりを
わたしはわたしの世界を見る
とぼけた朝の鋭敏な世界の景色を
悲しみの重なりや
幸福の来訪を
わたしは我らにはなれない
世界を見つめる時
可哀想に
君は君の世界を見ている
確かに 一人の人間として
皆で世界を見ようとする誠実さは
横暴な願いだ
独りの人間に対する粘ついた束縛だ
合理的な空間をもつ我らのゆえに
今や我々はそれぞれが乖離している
個々の個だ
独りが独りで 一人が一人だ
それを孤独とは言うまい
それを定めとは言っても
可哀想に
今日もわたしはわたしの世界を見ているだけだ
それがリアリズムだとしても