命と塵の話
ただのみきや
命に
値はつけられない
つまりものすごく高価な値って訳だ
生きる値もない奴だって
持っている命の値は計り知れないお宝さ
故に人は高価で尊い
かけがえのない命というものが
こんな汚れたゴミクズみたいなおれをも
限りなく価値ある者にしているって訳さ
そんな身に余るお宝を
自分で捨てるなんて勿体ない
――なんてったって構わない
僕は君に首ったけ
死んでも君を離さない
地獄の底までついて行く
oh please stay by me……
《ダイアナ(歌:山下敬二郎)より》
ところがある日
命の方が三下り半を突き付けて
出て行った あっさりと
捨てられたおれは途方に暮れたけど
こんな唯物主義の世の中じゃ
塵になるしかなく
恨み言ひとつ言えず漂うだけだ
雨に濡れては泥になり
日に焼かれては固まって
そうして また削られる
風の吹くまま
誰かの目に飛び込んで涙を誘ったり
誰かの鼻に吸い込まれクシャミをさせたり
煽られて舞上る 高く 高く
まあ そんなに悪くもないけど
おれから解放された命は
もっと高く 宇宙ステーションより高くにある
別のステーションのカフェでお茶でもしながら
笑って眺めているのだろう
尊い命さん ご機嫌よう
下界じゃ涙とクシャミが絶えません
《命と塵の話:2015年12月23日》