吸殻
為平 澪
吸殻だけが散らばった 歩道の隅に
吸殻だけになった女がひとり 見上げる男の影
さっきまで私をその口で 必要としてくれた人
炎のような熱さで 私を吸収して
求められるままに私は あかい告白を繰り返したのに
人差し指と中指で、ポイっと、飛ばされ
見知らぬ車に轢かれて炎も消える、火も消える
希薄なつながりだけど一時的に必要
そんな消耗品の女を都合よく手に入れる男との釣り合いは
どちらがどちらでも責められない 需要と供給 五分と五分
トウキョウの片隅に
いや、トウキョウに憧れ焦がれた燃えがらに
ちっぽけに転がる 少しのドラマを
泣きも笑いもできない顔たちが のっぺり舌を出して
冷笑を浴びせる くらいMAX
私を轢いていく車のライトが映し出す男の顔が白く浮かぶ
(その口で、今まで何といって私を言い包めたの)
茶色く薄汚れ粉々になる私を 見つけられる人はもういない
男は
いつも 何食わぬ顔をして また
ポケットの 新しい煙草に火をつける