ゆくえ くれない
木立 悟
ひたした場所の反対側が
常に常に染まりゆく
血溜まりが紅葉になり
水の底から空を見ている
空には無数の雛人形が
淵の目をして見つめ返す
夕刻は夕刻を着てますます低く
曇をはじく指へと変わる
空の潮が干いてゆく
陽が鳥に飛び去ってゆく
失くしては得る短い旅
返らぬ応えの永い道のり
はじくものに飢えさまよう指を
雨の光が染めている
水紋と水紋をつなぐ声
うすむらさきの夜のはじまり
明るいものがすぎてゆく
温かなものがすぎてゆく
見知らぬ色を見つめながら
紅葉は水紋になってゆく
光の辺のほどける真下
作り物の栗鼠が見上げる波
交わらぬ視線のはざまから
かけらは紅に紅に降る