夜明け前
涙(ルイ)

ホームに立ち尽くして 聴いていたよRock 'n' roll
今夜わかり合えるのは このメロディだけさ


ひと気のないシートにもたれながら 
去っては消えていく景色を いつまでも追いかけて追いかけて
流れてく景色の中にこのどうしようもない気持ちも一緒に捨て去ることができたなら
なんて そんなこと出来るわけなんかないのに
俺何やってんだ バッカみてぇ
小さくため息ふたつついて 少しだけ笑った


駅から少し歩いたところにある小さなアパート
灯りのない部屋だけが 俺の帰りを待ってるのさ
疲れた躰をベッドに投げ出して 眠れない目を瞑る
今夜もまた あの夢に悩まされるのだろうか
忘れようとして 棄てようとしては
回収されずに戻ってきてしまうあの夢
俺は一体 何を求めているのだろう
何を探し続けているのだろう
一時の安らぎか 包み込むような優しさか
もうすべて終わらせてもいいよという
誰かの赦しの声か
考えても問いかけても 応えてくれる人なんか誰もいやしなかった


ワケもなく流れ出す涙 鼻に伝ってツンと痛い
生きることはどうしてこんなにも大変なのか
誰も教えちゃくれなかった
誰もが知らぬ顔して歩いてる あのスクランブル交差点
幸福も不幸もない交ぜの あのスクランブル交差点のど真ん中で
立ち尽くしたらそれっきり 動けなくなってしまいそうで
それが怖くて 休むことさえできないんだ
俺は一体 どこを目指して歩けばいい?


窓の外 酔っ払いたちが小競り合う声がする
向いのマンションの角では
誰かがさっきからずっと ケイタイでしゃべり続けてる
素知らぬフリして街灯が 煌々と夜の闇を照らし続けてる
今夜も眠れそうにない
俺はリモコンを手に取り 
おもむろにステレオの再生ボタンを押した
他にわかりあえるものなどなにもないメロディが流れ出した
暗い部屋の中 耳障りな声を消し去らんがためのメロディが
部屋じゅうに充満していく頃
ようやく俺は 浅い眠りの中へと堕ちていけるんだ






自由詩 夜明け前 Copyright 涙(ルイ) 2015-12-21 22:53:35
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