メザシ焼く
母の手のひら
暖かく

目玉焼き
醤油をかけて
飯を頬ばる

祖母の手で
かき混ぜられた
糠はいま

シュウマイに
中華料理の
花をみる

ボルシチの
温かさに
冬を乗り切る

僧坊の
たくあん盗み
正座する

フグおどる
黒門市場の
大阪正月

カキフライ
タルタルソースの
夢の果て

肉まんの
温かさに
冬をしる

タンメンに
まなこを落とす
冬の空

メカジキの
大トロ照焼
腹が鳴る

何時の日か
カツ丼頬ばる
夢を描く

鴨南蛮
大晦日には
かかせない

かつお節
祖母の教えを
いま守る

ソーセージ
中世の秋に
喜びを

スネ肉を
煮込む夕べに
何想う

コンニャクに
辛子をまぶし
涙する

キモ吸いの
暖かさ
滋味をしる

目玉焼き
朝の基本は
ここにあり

トーストに
バターとジャムを
塗りつける

珈琲の
苦さと甘さを
知る朝に

炒飯を
かきこむ姿
懐かしく

板わさに
涙を流し
酒を呑む

塩辛を
肴にしては
もう一杯

おにぎりの
三角に映る
心臓は

ウイスキー
とことんまでに
勝負する

牡丹鍋
妻と向かいて
鍋奉行

クレソンの
香りが漂う
鴨鍋に

ブリ大根
浮いた脂に
舌を打つ

肉団子
中華の歴史
ここにあり

給食の
ミートソースの
スパゲティ

ワンタンの
余韻にならす
妻の舌

もり蕎麦に
一味を振りかけ
相撲みる

キツネうどん
たぬきに負けない
そこ力