リズム
鷲田

人々は足を動かす
サッサッサッ バタバタバタ
トントントン タッタッタッ
生活というリズムを繰り返すため
肉の欠片を全身に集めて
凍てつく日も 火照る日も

朝起きて、食事を食べ
仕事の準備をし、電車に乗り
職場に着き、仕事をして
仕事を終えて、家に帰る
そして休みを取り、眠りにつく

リズムは糧の上に成り立ち
獲物は社会に潜んでいる
私達は獲物を確保し、世界に浮遊する金に取り換える
金はリズムのために消費され
リズムの音色を保証する

生活への響き
日没とやって来る足跡がある
それは不安や不満を声に出す魂の塊
その響きはリズムのテンポを狂わせ
新しい音源を作る
感情という打楽器にのせ

渇望は欲求を乾かし
真昼の太陽を急がせる
例えば季節が映えるある日の午後に
足はより速くうごき、見えない残像を希望と呼ぶ

誰かが言う
“人々は機械ではなく、感覚を持つホモ・サピエンス
我々は乾いた言葉に沿って会話をする分けではなく
我々は乾いた言葉を使い物事を考えている分けではない“

実は私達は無機的な間隔に幸せを感じているのに

そうして犯した心の冒険に 
そうして犯した心の気紛れに
私達は何時までも勘違いをしている
自らの思い込み 自らの焦燥感に
リズムの定期性は失われ
私達は行方を忘れる

「私は鮮やかな夢が見たいのです」
「私は世界を明るくしたいのです」
声は木霊し、証明を持たない夢は妄想として個々の脳裏に住み着く
何時だって人生の浪漫は退屈な暮らしへの淡い誘惑である

ベンチに座ると暖かい風
私達は行方を、ふと思い出すことが出来る
ひっそりと咲く小さな花が向かう方角に
空間を蹴り上げ 年月の時計を見つめる時

寒い道端 
人々は足を動かし
リズムを今日も繰り返している
生活は人生の日常の景色である


自由詩 リズム Copyright 鷲田 2015-12-19 22:07:06
notebook Home