◎思惟の惑星
由木名緒美
宇宙の底から重力が持ち上がる
月は半身の影武者
その肩が抱く光を受けて
私達は夜の深淵を歩くことが出来る
亀裂を伴った果実は秘匿を香らせ
罪の熟成を誘う
勝ち得た絆は
染まらない無垢な直線で
思考の星座は澱むことなく
世界の溜息を見つめ続ける
哀しみは挽歌の笛の音のように
惜しまれた物語を抱擁する
あなたの眼差しが精緻である程
理性は穏やかに微睡むから
明日を迎え入れる胸は穏やかに
頁の狭間に休息を見出すことが出来るのでしょう
来世の未明から狼煙が立ち昇る
架空の交歓のように鮮明に
儚い程に意図的に
眠りは新たな覚醒を懐に
文字列は語彙を組み替える
静かなる満潮の語らいに
自転は静かにその水嵩を受け入れた